バックライト切れといえば、今さら説明するまでもないほどジャンクノートパソコンには、よく見られる症状です。 一見液晶が写っていない状態ですが、光にかざすとうっすら見えるような場合をいいます。 原因は、液晶内部にある冷陰極管そのものが故障して点灯しない場合と、インバーターが故障して冷陰極管が点灯しない場合とがあり、厳密に言うと後者の場合は「バックライト切れ」というのは不適当なのですが、ジャンクとして売られる場合には、故障の原因が特定されていないことが多いので、一括りに「バックライト切れ」として売られています。 今回紹介するThinkPad X31もやはり「バックライト切れ」ジャンクとして売られていました。

光りにかざすとかすかにBIOS画面が見えます
■バックライト切れの原因
それではまずバックライト切れの原因を確認します。 フロントベゼルを止めている3カ所のネジを緩めます。X31のフロントベゼルは薄くて割れやすいので、注意して外していきます。 しかしながら、本機はすでにベゼルが割れていました。通常使用の場合、このように割れることは滅多にないでしょう。よく見てみると同じ場所のパームレスト部分にも割れが有るので、本体右方向から衝撃を受けたのではないか?と思われます。
ベゼルを取り外すと液晶パネルとインバーターが確認できます。 まずはインバーターが正常かどうかを調べます。 本体の電源を入れインバーターから出力するかどうかテスタで調べるといいのですが、ちょっと趣をかえて別の液晶パネルから取り外した冷陰極管で調べます。(昔のレッツノートの液晶パネルの冷陰極管です)
冷陰極管のコネクタをX31のインバーターに取り付け、電源をいれます。 まもなく冷陰極管の点灯が確認できます。ミニチュアの蛍光灯みたいなものですが、光ると結構明るいです。インバーターは正常動作しているようなので、バックライト切れの原因は液晶パネル内の冷陰極管のようです。

すでに破損していたフロントベゼル。側面からの衝撃があったのかも??

むき出しの冷陰極管を取り付けます

冷陰極管が点灯しました。インバーターは大丈夫のようです。
冷陰極管点灯の動画 x31-lcd.wmv (937KB)
■修理法の考察
修理は正常な冷陰極管と交換すればOKなのですが、交換作業が面倒というかデリケートな作業が多いので、今ひとつ乗り気ではありません。 液晶を一度分解して組み立てるとどうしても液晶画面に変化が出ます。私の腕が悪い(当然かも)のか、作業環境が悪いのか、液晶パネル内にゴミが入ったりして、いつも今ひとつの出来です。 オークションなんかで「冷陰極管交換します」で出してる人がいますが、すごいなぁと思ったりします。
さて、修理の為のパーツですが、部屋のガラクタ箱から以前ジャンク品から取り外しておいたThinkPad X24の液晶パネルを出してきました。 液晶は割れていますがX31と同じ12.1インチの液晶パネルなので、冷陰極管が流用できそうです。
■液晶パネルの分離
保守マニュアルに沿って分解を行うならば、本体から液晶カバーごと取り外して、それから液晶パネルを分離するというのが正しい方法ですが、ちょっと手抜きをして作業を行いました。 フロントベゼルとインバーターへのコネクタを取り外した状態で、 液晶カバー両側面のネジを片側3本ずつ計6本を緩めます。もちろんシールでカバーしてあるのでそれを破がしてから緩めるのですが、本機はすでに3カ所ほどシールが有りませんでした。 6本のネジをすべて取り液晶パネルとカバーの隙間にマイナスドライバをいれ、少しずつ こねるように分離します。無理にやると液晶パネルが割れたりするので、優しく優しくです。そして、カバーとパネルに隙間が出来たら、液晶ケーブルを外します。液晶ケーブルはテープで固定してあるので取り外しの際に気をつけます。 液晶ケーブルが外れたら、液晶パネルを液晶カバーに固定するブラケットをを取り外します。ブラケットには無線LANのアンテナも付いています。 以上の作業を終えると液晶パネルが分離できます。
取り外した液晶パネルは、私が持っていたX24のパネルと同一のパネルでした。 冷陰極管も無改造で交換可能ということが分かり一安心です

液晶カバーから液晶パネルが外れたら、液晶ケーブルを外します

無線LANアンテナの取り外し

やっと液晶パネルが分離できました。

液晶パネルの型番を示すシール どちらもLG PHILIPS社製でした
■液晶パネルの分解、冷陰極管が取り外せない?!
では、今回のメインイベント、液晶パネルの分解へと突入します。 液晶パネル裏側に液晶パネルを囲っている金属フレームを止めているテープがあるので、これを剥がします。 その他、制御基板部分には両面テープで固定している部分があるので、こちらも剥がします。 金属フレームを取り外すと白色のプラスチックフレームと液晶表示部分が現れます。 冷陰極管は白色のプラスチックフレーム内に有りますが、見たところ単体で取り出すのはものすごく作業がやりにくい感じです。 一瞬考えましたが、同型の液晶パネルなので別に冷陰極管を取り出さなくても、プラスチックフレームごと使えばいいことに気がつきました。 冷陰極管交換というより、液晶パネルのニコイチですね。
ところでバックライト切れのパネルを調べると、やはり冷陰極管が破損していました。冷陰極管付近のプラスチックフレームが割れているので、この付近に衝撃が加わったようです。

固定しているテープをはがしています。

制御板付近の両面テープをはがします

金属フレームを取り外しているところ。曲げないように気をつけます
■ニコイチの極意
「極意」といきなり大きくでましたが、せっかくニコイチをやるのなら冷陰極管は当然のこと、他のパーツについてもそれぞれ比較して、よい状態のパーツを使うということです。 今回の場合は、反射板部分がそれに当たります。反射板部分は何枚かのシートから構成されており、目視で状態のよいシートをそれぞれの反射板部分から選んで使います。 始めは、どちらも状態は変わらないのでは?と思っていましたが、実際にみてみると傷が入っていたりしていました。

液晶表示部分と反射板部分 液晶表示部分の下には反射板があります。反射板部分はいくつものシートで構成されています。

すべてを取り去った状態です。プラスチックフレームの中に冷陰極管が内蔵されています。
取り外しには苦労しそうです。同一の型式なので、フレームごと流用できます。

バックライト切れパネルのフレーム プラスチックが割れていました

冷陰極管も破損しています
■組み立て
それでは組み立てていきます。 プラスチックフレームに反射板部分のシートを重ねていきます。そして液晶表示部分を載せます。 反射板部分も液晶表示部分もそうですが、重ねていく際に間にゴミをかまないように注意します。 せっかく写るようになったのにゴミが入ってたなんていうと、ガクッてきますね。 そして、金属フレームを嵌めテープで止め、制御基板部分も両面テープで貼り、元の状態に戻します。

両面テープで固定します。
■動作確認、でも・・・
組み立てた液晶パネルを仮組みして動作確認です。 結果は見ての通り、バックライトは点灯するもののライン抜けがあり、さらに詳細に観察すると薄いシミも点在しています。 分解前の画像ではライン抜けが見あたらないので、分解組み立ての際に不手際があったのだと思いますが、自分的にはかなり慎重に取り扱っていたつもりなので残念です。 シミの方は以前からあったものなのか、そうでないかは元の画像では不明です。しかしながら、反射板のシートをばらして重ね合わせたりしたので、その際に出来た可能性があります。

仮組みして電源をいれます。残念なことにライン抜けが出ています。

分解前にはライン抜けはありません。分解組み立て作業のどこかで発生したようです。
■最後に
慎重に作業したつもりですが、バックライト切れは修理できたもののライン抜けが出るという結果になりました。毎度の事ながら、液晶パネルの分解組み立ては難しいものがあります。 正しい液晶パネルの分解組み立てを知らないので、全くの我流でやっています。そんなところもライン抜けの原因の一つでしょう。 実際に組み立てをやっている人が見たら、「なんだこりゃ!」なんて思われているかもしれませんね。